平成26年度 九州大学教育研究プログラム・研究拠点形成プロジェクト
空間の認知と評価に及ぼす感情・感性評価・価値判断
1) 実空間における身体行動と知覚
身体行動に依存する知覚の変容に関し、難易度の異なるボール入れ課題を用い、知覚されるゴールの大きさを比較検討した。その結果、異なる大きさのゴールが同時提示した条件においてのみ、また行動を伴う、もしくは行動を意識したときのみ、大きさ判断が変容することが示され、行動依存知覚理論から考察を行った。
2) 空間における身体行動と感情
2-1) 感情により誘発される上下方向への身体動作
画像の感情価が身体動作の影響を受けることを指摘した。すなわち、感情を喚起する画像を見た後に、点を画面上の任意の場所に移動させると、快画像を見た後の方では不快画像を見た後に比べ、上部に移動させることが示された。この効果は両眼間抑制によって画像が見えない時には生じなかった。感覚運動表象の形成における意識の関与の観点から議論を行った。
2-2) 上下方向の身体動作により遡及的に影響を受ける画像の感情価
身体動作が直前の感情(評価)に影響することを指摘した。すなわち、画像を見る前に画面を上にスワイプするとその画像が快く感じられ、下にスワイプすると不快に感じられることが示された。また、この効果は直後に限られ、動作と評価の間が2秒間空くと生じないことから、感情はその出来事と時間的に近接する関連情報を統合し、後付け的に形成されていると考えられる。
3) 密集した円画像に対する不快感情
3-1) 密集した円画像に対する不快感情と空間周波数特性
密集した円形画像は不快感情を喚起する。先行研究では、この現象に画像の中域の空間周波数成分が関与するとされてきた。本研究では、様々な帯域の周波数成分を除去し、不快感の変容を検討した結果、低域成分を除去すると不快感は上昇するが、中域成分を除去しても不快感は低下しないことが示された。不快感の源泉についても議論した。
3-2) 密集した円画像に対する不快感情と嫌悪特性
密集した円形画像の不快感に関し、嫌悪尺度(DS-R)を用いて検討した結果、汚染源や病気の感染源となりうる対象を忌避する「汚染嫌悪」と関係のあることが示された。この嫌悪感には、空間周波数特性のような知覚的要因だけでなく、「ウイルス」「血液」などの認知的要因も関与することが示唆され、複数の処理ステージを含む感情モデルを構築する必要性を指摘した。
九州大学心理学講座
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